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5.1 太陽放射と室内気候
5.1.1 太陽と太陽放射
太陽は生まれてから約50億年を経た恒星(天球上で相互の位置をほとんど変えず、星座を作る天体)で、毎秒3.85×1026ジュール(ジュールの記号はJ:1kcal=4.186kJ)の放射エネルギーを宇宙空間に放出している。天文学数字であるので理解しにくいが、太陽が宇宙に向かって1秒間に放出するこのエネルギー量は、人類が100万年かかって使用するエネルギー利用に匹敵する。
このように膨大なエネルギーを放出する太陽は、宇宙空間に漂うガス球でその組成は、水素71%、ヘリウム27%、その他の元素2%である。また、その直径は140万kmで地球の約100倍、地球から月までの距離に換算すると3.6倍程度あり、その質量は地球の33万倍に匹敵する。また、太陽は地球と同様、北極と南極を軸として自転しているが、赤道では約25日、極に近いところでは約33日程度と遅く、この回転を差動回転または差分回転という。
太陽の内部構造を図5.1に示したが、太陽の中心温度は約1600万K(ケルビン:絶対温度)という超高温で核融合反応を起こし、多量のエネルギーを放出すると同時に、エックス線、ガンマ線やニュートリノを放出し、水素が持つ4個の陽子から1個のヘリウムが作られ、発熱と同時に水素はヘリウムへと変わる。太陽の中心部では、毎秒6億7000万トンの水素が燃焼し6億5250万トンのヘリウムが作られるが、この差1750万トンの質量が、質量とエネルギーの等価原理に相当したエネルギーとして太陽内部で発熱し、太陽表面ら地球など惑星への太陽放射として放出する。また、太陽を構成する水素の10%程度は正常に核融合反応を起こすと考えられているので、現在の水素の消費量からすると、後50年億年の寿命があると推定されている。
太陽の中心・核の部分で核融合によって生じた膨大な熱は、ガンマ線やエックス線によって太陽の外部の方向に運ばれるが、表面近くでは紫外線や可視光線として運ばれる。また、我々が地上から肉眼で見ることができる円盤状に見える部分を光球といい、光球の半径Rを1とすると中心から0.8R前後の放射層では放射によってエネルギーが運ばれその温度は50万度程度であるが、この外側は対流層で乱流によって熱が運ばれ、その温度は4300~6600度程度にまで下がる。また、太陽の中心部の密度は160g/cm3程度であるが、外部に行くにしたがって下がり光球の表面では8×10-8程度にまで下がる。
太陽と地球の間に月が位置する場合を日食というが、皆既日蝕ではこの光球の部分が月によって隠され、その外側に光るものを彩層というが、その厚さ2000kmにも及ぶ。その外側にはコロナがあり皆既日食のとき初めてその姿を見ることができる。
5.1.2 太陽放射と地球
太陽と地球の位置関係を図5.2に示す。太陽と地球の距離は近日点で約14700万km、遠日点で15200万kmの距離にあり、地球は1日に1回自転を行いながら太陽の周りを365日と6時間をかけて1周する。これを公転というが、ほぼ円形に近い楕円軌道をとり、地球が太陽に最も近づいた日を1月1日と定めている。
太陽から宇宙に向かって電磁波として放出される太陽エネルギーは、0.3μmから5μm(300から5000nm)以上にわたる固有の分光分布を持って地球の大気圏外に到達する。図5.3に地球が受ける全受熱量(太陽放射)を示したが、1北半球の受熱量はab間、2南半球の受熱量はbc間で、この両者を合計したac間の受熱量が太陽から地球に到達する全エネルギー量(太陽放射)で、約1353W/m2でこれを太陽定数といい、常時地球が受けているエネルギー量である。この図では、ab>bcであるので、南半球と比較して北半球の受熱量が大きく夏期の状態を示している。半年後には太陽と地球の位置関係が反転し、太陽放射が左側から来ることになるので、bc>abとなって南半球は夏
、北半球は冬の状態になる。しかし、年間を通じて太陽から地球への受熱量はシーズ
ンには関係なく一定で、右側の壁に生じた影の部分に相当する。
太陽放射は、我々が空気といっている大気圏内に入ると、空気中の空気そのものや水蒸気、炭酸ガス、塵埃などにその1部は散乱・反射または吸収され、減衰しながら地上に到達する。地球に到達するこれらの太陽放射の全てを含めたものを日射というが、図5.4に示したように、分光分布の波長域を0.38μm(380nm)までの紫外線域、 0.38~0.78μm(380から780nm)の 可視光域、0.78μm(780nm)以上赤外線域の3域に分けて取り扱っている。一般に、波長の短い紫外線はラジオやテレビの電波、医療用のx線などがこれに相当するが、晴天日には殺菌作用を利用して布団を干すなどは古来から利用されてきた方法である。可視光線は光として見ることが可能な電磁波で、波長の長い方から短い方に向かって赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の視感があり、人間が色彩としてその色を感じることができる。また、赤外域は熱線で太陽放射を受けると暖かさを感じる。
このエネルギー量によって海面や地表面などから水が蒸発し、この上昇気流によって風が生じる。また、地球の自転によるコリオリの力の影響を受けて海流が生じ、水中への酸素の供給が行われ、水中にも生物が生息できる環境を構築している。地球上の空気の流れ、海流、動植物を含めた全ての諸活動はこの太陽エネルギーに依存している。
生物の住むこの地球上の空間をバイオスフィアー(Biosphere)というが、地球は、太陽に対して23.5゜の傾きを保ちながら1日に一回自転し、365日と6時間・1年をかけて太陽の周りを1回転している。
また、図5.4の右側に示したように、地球全体から10μm前後の長波長として宇宙に熱を放出しているが、その放熱量は地球のどの場所においてもほとんど一定である。地表面では、極地より赤道に近い場所での受熱量は大きいが、大気の循環によって赤道近くで余った熱は極地に運ばれ熱平衡が保たれているので、地域における特異な気候変動は生じない。
5.1.3 空気や水は断熱材
建築分野では、空気は断熱材とよく言われている。地球が受ける太陽放射は、短波長で空気中を通過しながら、その分光分布の一部は徐々に空気中の水蒸気などに吸収され減水しながら地表面や建物表面、人体などに到達する。不透明材利用や半透明材料では、その表面で太陽放射(電磁波)を受けると一部は反射し、残りはその表面で波長がのび長波長となる。この長波長となったものが熱である。水やガラスなどの透明材料では、太陽放射のほとんどは通過し、水面やガラス表面では熱にならないが、透過後に当たった不透明材利用の部分、例えば、水泳プールなどでは、プール本体の側壁や床など不透明材量の部分で長波長になり熱となる。ガラスの外皮を持つ屋内プールでは、この熱によってプールの水温は上昇し、夏期では30℃を越える状態になるプールも有り問題を生じている。また、室内の空気系に対して、室内で長波長になった熱は、空気中の水蒸気、CO2などに阻まれ外部への流出がしにくくなり室内にたまる。それゆえ、冬期の外気温が低い東北、お北海道においても晴天日の日中は、ある程度の室温の確保が可能であることが明らかになっている。
5.1.4 室内の居住快温湿度
ある室内環境の条件のもとで、体内での熱生産と体外への熱放散がバランスしたとき、人はその環境を快適な環境という。体内での熱生産は、心臓のポンプの容量や揚程、生活活動におけるエネルギー代謝量によっても変化し、体外への熱放散は体表面積や着衣量を示すclo値の大小によっても変化するので、室内に居住する100人が同時に快適であるという環境は存在しない。そこで、一般に快適環境とは、大半の在室者が快適と感じる環境、または不快でない環境のことを言う。快適性を示す総合指標には色々の方法があるが、図5.5に軽い着衣の成人が労働をしないで、室内風速が0.25m/sの室内に長時間滞在したときの感じ・温感を相対湿度50%の線上の温度で代表した新有効温度ET*で表したものを示す。この図はアメリカ暖房・冷凍空調学会(ASHRAE)で提案されたものである。ET≧30℃では空気中に含まれる水蒸気の重量(絶対湿度)の影響が大きいが、ET≦25℃では空気の相対湿度(一般に言う湿度)の影響が大きいと言われている。また、作用温度とは、気温、気流、輻射などによる温熱感覚を示すもので、空気の温度θaと壁平均鼻
縮眠硬戲〓の和の平均値を示し、湿度の影響は考慮していない。ただし、西欧などで熱容量の大きい石造りの建物などでは、作用温度として(θa+2θw)/3を用いる場合がある。これを環境温度というが、快適性に対する空気の影響が1/3、壁の表面温度が2/3であることを示している。
5.1.5 ガラスの熱特性・光特性
透明ガラスが太陽放射を受けた場合の熱量の配分を図5.6に示す。太陽からの受熱量1を100%とすると、このうち85%は短波長2のまま直接ガラスを透過し、直射光として室内にはいる。ガラス表面3で短波長のまま反射するものが7%ある。残りの8%はガラス表面で長波長になり熱となってガラスに吸収される。ガラスに吸収された熱4は、室内外のガラス表面に生ずる空気の流れと熱放射によって室内5、室外6に分けられ放出する。室内側2%、室外側6%と室外側の方が大きいが、これは、室内側のガラス表面の気流速度は自然対流であるが、室外側は3m/s程度の外風速があるとして計算したためである。結果として、室内側に入る熱負荷は87%程度になり、室外側へは13%程度が放出される。例えば、日射遮蔽物を室外側に設けた場合は、太陽放射1の85%程度は室外に放散され、室内への熱負荷は15%程度になり、夏期などの熱負荷の減少に大いに役立つことが判っている。
5.1.6 ガラスを多用した建物の環境と外壁の構成
ガラスを多用した建物が増えているが、ガラスの使用に当たっては、太陽放射や空気の性質、ガラスの特性などを十分把握したうえ計画することが望まれる。
建物外皮を通して室内に熱や光が入る建物部位はファサードである外壁と屋根である。この建物外皮に関係のするパラメータ(媒介変数)を表5.1の1から5に示した。例えば2の気象要素は、太陽放射、外気の温湿度、外風速などが、3の室内環境としての制御項目が決められたときに影響を受ける項目であり、4の熱・光野の制御、5の建物のエネルギー消費や維持管理に影響を及ぼす。それゆえ、この表に示したパラメータについて建築、環境・設備計画について検討すれば良いことになる。
建物外壁の基本構成を表5.2に示す。この表では壁のタイプをa透明ガラス、b半透明ガラス、c不透明材料の3種類に分け、番号1から4の単層・単材から複合材・複合シェルの4種類に整理した。例えば、番号1のa、b、cでは、aが透明の安全ガラスを支持材で受けたタイプ、bが半透明のガラスブロック、cが不透明材料としてのコンクリート壁を示している。また、上段横に示した1から6は、外気側から室内側への外壁の構成を示している。
5.1.7 建物としての太陽エネルギーの利用方法
表5.3に建物としての太陽エネルギーの利用方法について示した。太陽熱の利用方法には、温度差換気や外風速を利用した自然換気、採光や再熱などにより直接利用する方法、集熱板、ヒートポンプや蓄熱層などの機械類を用いて暖房・給湯用として間接利用する方法がある。その他として、通風・換気などに利用する方法もある。給湯
・風力発電等は経済的に採算がとれ、一般に普及しているが、その他の方法はまだ実用化の段階には到っていない。最近、公園の屋外照明やアナログ式時計の電源として小規模な太陽光発電が採用されているが、大規模なものは実験的に理用されている例はあるが、蓄電池の値段が高く実用化にはまだまだ時間がかかるものと考えられる。参考までに、実験段階ではあるが、国内最大規模の太陽光発電パネルは3000m2の建物屋上に2110枚の太陽電池アレイを施設し、最大300kWの発電量で、建物の照明用電源300kVAを賄う計画の建物もある。
将来、ガラスを多用した建物が増加し太陽光発電パネルを日射遮蔽物として用いる例が多くなることが想定されるので、壁や屋根への取り付け方法の基本形を図5.7に示す。壁や屋根の外側または内側等取り付け一迫ざまであるが、取り付け位置と熱回収量、室内への熱負荷等取り付けに当たっては、多面的な検討が必要であると判断する。
参考文献
1)比江井栄次郎/国立天文台太陽物理学研究系研究主任・教授:「太陽物理学」が描き出した太陽活動最新理論,最新太陽系論,学研,pp28-35,1990.7



